富士山探索後半です。嬉しいことに雨は止み、所々晴れる時間も現れ始めました。
後半は4合目から3合目で下山するまでの収穫を一気に紹介します。
4合目以降は5合目までの、火山の噴火を感じられる森林限界からはガラリと変わります。
見渡す限り地面は鮮緑色の苔に覆われ、そこに幾本と立ち並ぶ木々はシラビソやモミ、カラマツ、トウヒなど寒冷地の針葉樹。それらが作る薄暗い森林には霧が立ち込め、まるで別世界に来たかのような気分。
ツガタケ
国内で富士山以外だとどこにあるの!?と思う程に、検索しても富士山での画像しか出てこない種です。
オオカシワギタケとも呼ばれることがあります。本種は極めて美味な主として、観察会の方が激推ししていましたが、残念ながら私の舌では本種の魅力を感じ取れませんでした。うp主的には、歯切れは異様に良いと感じたものの、味は普通でした。
ヌメリササタケ
個人的に味噌汁に合うきのこの最上位と思っています。
雨が続いたため、途轍もない粘液を滴りぶら下げています。図鑑で何度か似たような光景を見たことがありましたが、実際に見ると凄まじい迫力ですね。
この強烈なヌメリはもう人間が掴めるものではないと言っても過言ではないレベルでした。
ちなみに採取したところ、ヒダに付いていた微小なトビムシが驚いて逃げ、カサや柄の粘液に落ちて自滅してしまう光景が見られましたw
シラガツバフウセンタケ
これもまた高地のフウセンタケですね。ただカバノキ科樹下に発生する種ですが、コメツガやモミしか生えていない環境で確認したため、別種である可能性が高い、実際に複数種が含まれていると言われています。
ゴヨウイグチ
人生で初発見!!長年見てみたいなぁと思っていたイグチです。ゴヨウマツやハイマツなどの木と共生するので、当然ながらそれらの木が発生する森林限界付近でしか見られません。
シロヌメリイグチだろうと思いましたが絶妙な違和感に気づき、裏を見てみるとチチアワタケ感のある姿が!
一瞬でゴヨウイグチだ!と分かりました。
ネットで見た画像のままですね。正に(チチアワタケ+シロヌメリイグチ)÷2と言った姿をしています。
もうカラマツチチタケとアミハナイグチは落ち葉レベルで生えていますw
クマシメジ
2022年10月にメインフィールドで謎に1本だけ生えていたものを撮影、その後図鑑に追加していたと思います。
1個体のみで寂しいページだったのでいい感じに群生している画像を追加できて光栄です。
シロフクロタケ
遠くから見た時は亜高山帯にシロタマゴテングタケ?と思いましたがヒダの色を見て納得。
フクロタケ属はなかなか見たことがなかったので嬉しい撮影です。
コゲエノヘラタケ
富士山に行く時は毎回見れています。
食毒不明ですがどうせ無毒だろと思い食べたことがあります。無論問題はなかったのですが、意外とコリコリしていて美味しかった記憶があります。
今回は収穫しませんでしたが。
オウバイタケ
これこそまさに私が富士山で本当に撮影したかった種と言っても過言ではないでしょう。
欲を言えばコウバイタケも見つかって欲しかった。ですが十分満足です。
まだきのこの図鑑を作ろうだなんて思っていなかった4年以上前に、何度も富士山で目撃していました。当然撮影はほとんどせず。図鑑を作ろうと思い始めてから、去年、一昨年は見つけられず。
今年は潤いに潤った個体が何本も見つかるものですから興奮なんて物じゃないですよw
寒冷地に多い種なので地元ではまず見られない点もより感動を増幅させます。
スミゾメシメジ
またもや美味しいきのこですよ。この株以外は見つかりませんでしたが。華奢で、黒変性を持つやや不気味な見た目とは裏腹に、しっかりとホンシメジやハタケシメジなどのシメジ属が持つ独特の香りがあり、味、歯切れと共に最高水準です。
ズキンタケ
雨で潤いプルンプルンです。それにしてもズキンタケは本当にグミのような見た目ですよね。そのままパクっといってしまいそうです。低地の公園で偶に見かける華奢なものとは比べ物にならないほど分厚く、そして大きい。何より量が凄まじかったです。
この黄色いものは全てズキンタケの群落ですw
生えすぎでしょw 4合目からはほぼ永遠に見つかりました。落ち葉レベルでどこにでも生えていましたw
これだけあるなら食べてみようかなと思いましたが、仲良く群れで生えている様子が美しく、採取するのは何となく可哀想に感じ、収穫はしませんでした。
ジンガサドクフウセンタケ
フウセンタケ属最強と言われる毒菌です。日本での中毒事例はないようですがヨーロッパなどでは恐れられているとかないとか。
ショウゲンジ
8月に見られるのは富士山ならではなのではないでしょうか。よほどの高地ではない限り9月以降でないと見られないでしょう。
身が硬く締まり、丁度よい幼菌が多く、当然ながら収穫。
アイシメジ
超絶久しぶりに見たと思います。シモフリシメジ+シモコシと言った姿をしている通り美味なので収穫。低地の雑木林でも見られるそうですが私は富士山と山梨県某所の高原でしか見たことがありません。
タンポタケ
ツチダンゴ系の地下性菌から発生するトリポクラジウム属の冬虫夏草は人生で初めて見ました。常緑樹林に多そうなイメージでしたが富士山などでの針葉樹林でも見つかることは知っていたのでワンチャンあるかな?と思っていたら本当に見つけました。
まず何より、でけぇ! 人生で見た冬虫夏草の中でずば抜けて巨大です。普通に10cm近くあります。地下性菌から生えるので、菌性虫草とも呼ばれますが、こんなにもデカいとは…
宿主は恐らくアミメツチダンゴと思われます(2枚目の右側の膨らみ)。こうしてみると子実体は宿主の約10個分の長さですねw
菌性虫草ってこんなにデカいんか!?と思いましたが調べてみるとタンポタケだけが異様に巨大なようです。ハナヤスリタケや広東虫草などは子実体も宿主も本種より圧倒的に小さいようですね。
ニカワハリタケ
これも発生量が凄まじく、落ちている枝を見れば5枝に1枝ぐらいの確率でニカワハリタケが付いているというとんでもない状況。
全身が透明感のある純白で本当に癒されますね。裏側は針状なので触り心地も良いですし。
ナラタケ
流石高地と言ったところです。地元なら10月以降でないと見られないので今年は一足早くナラタケを味わえました。
と言いつつも、例年では地元で9月上旬に大爆発するナラタケモドキの方を先に味わい、その1か月後にナラタケを味わうスタイルだったので今年はそれが逆転しました。
キナメアシタケ
今回の探索で見たかったクヌギタケ属の1つです。見たかったきのこが結構見つかってますね。
夢を叶える日ですか?と思う程ですw
ナメアシタケの方は見たことがありますが本種は今回で初発見となりました。
全身が落ち着いたレモンイエローで、ただでさえ繊細で色とりどりなクヌギタケ属の中もトップクラスで好きな種です。
サナギタケ
富士山で見つかるかもしれないと思っていた冬虫夏草はタンポタケと本種でした。見事に両方見つかりましたw
冬虫夏草の中では代表的な種ですが、案外高緯度地域に多いようですね。思った以上に小さかったものの、図鑑でよく寄生されているタイプの蛾の蛹がしっかりと出てきました。ぱっと見1本の子実体に見えましたが掘り進めるともう1本が出てきてギロチンしないかヒヤリとしました。
ドクツルタケ
ここに来て世界最強レベルの猛毒きのこです。高地の針葉樹林で見られる大型で純白の姿は正に真のドクツルタケと言っていいでしょう。低地で見られる細い個体とは全く違います。
それにしても美しい…汚れを知らない純白で清楚な姿はまさに天使ですね。
この超有名な最強猛毒種は図鑑に未掲載だったので、今回の撮影を機に追加できますね!
今年は有名なものの、画像を持っておらず図鑑に掲載できていなかった種を多く追加できそうです!
アブラシメジモドキ
1本でも食べれば絶命する猛毒種の後は超美味種の登場。味、食感はヌメリササタケと全く同じですが、まさにきのこって感じの色合いですよね。
富士山で何回か見たことがありますが、発生量は少なく感じ、やや貴重なイメージなの喜んで採取。
ミヤママスタケ
サルノコシカケ系の漢方薬としての用途は置いておいて、食べられる硬質菌と言ったらまぁ本種が含まれるアイカワタケ属ぐらいしかないでしょう。
漢字で書くと鱒茸。鱒の切り身のような見た目が和名の由来ですが、見た目だけでなく、味までも鮭や鱒に似ていると感じます。
特に幼菌の天ぷらは完全に鮭ですw 私の舌ではほぼ区別が付かないレベルでした。
当然、富士山でしか見たことがなく、今回も喜んで収穫…しようとしたところ…
うそやろwww
何と言う発生量!?えっ、ヒイロタケとかじゃないよね?ミヤママスタケだよね?
これは笑うしかありませんでした。少し遠くに不自然と言えるほどにオレンジ色の物体が見えたので、まさか…と思い見てみると図鑑でも見たことのないレベルの超大群生ですよ!
しかも全てが食べごろの幼菌です。なんだこの天国みたいな空間は…
こんなの採取しない手なんてないに決まっています。紙袋が本種だけでパンパンになるほど、そしてその紙袋も2枚になるレベルでの大収穫でした。
ホソバミズゴケ
もうねぇ…きのこだけでなくずっと見てみたかった苔までも見られるなんて…
完全に夢を叶える探索ですね。
野生のミズゴケなんて初めて見ましたよ。最初は異様に緑が鮮やかなコケが群生しているな~と思いましたが普段のシノブゴケなどとは何か違う。近づいてみてみるとファッ!?
ミズゴケやないかい!!! まじか!? こんな生えているのか!?
ぎっしりと、何本も密生して緑の絨毯を作っています。他の苔とはまるで違う雰囲気。そして触ると感じる潤い。これが天然のミズゴケか…
何年も前から、寒冷地を訪れる度に探し求めてきた苔が遂に見つかりました。
感動なんて物じゃ収まり切りません。
Scutellinia sp
本当に夢を叶える探索です。富士山でもアラゲコベニチャワンタケ属のサンプルを採取したいなと思っていました。開始早々アラゲコベニチャワンタケ属が好みそうな湿った朽木が沢山見られ、手抜きせずに探していましたが、意外と見つからず、心配でしたが3合目で遂に発見!!
恐らく、7月に山梨県の高原で見つけた個体と同じ種だと思われます。
またあったーーー!って生えすぎw
少し進んだところでモミの倒木を発見。ワンチャンと思い裏側を見るとそこにはとんでもない大群生でした。恐らく3桁は生えていました。
先程の個体とは別種だと感じましたが詳細は近い未来。
そしてアラゲコベニチャワンタケ属が生える朽木の特徴も掴めてきた気がします。ある程度樹皮が残っている朽木の方が生えていることが多く感じました。この先探す際に役に立つかもしれません。
チチタケ
一見、掃いて捨てるほど見られたカラマツチチタケと似ていますが微妙な違いに気づき、見てみたところチチタケでした。
広葉樹林のイメージが強いですが、流石は富士山。コメツガやモミなどの針葉樹林でもしっかりと見つかります。
ヒロハチチタケ
無印のチチタケがあるならヒロハもと思っていたらすぐに見つかりました。本種にしては大きく、シロハツモドキレベルの大きさがありなかなか迫力がありました。
ハミズゴケ
配偶体(葉)が退化し、胞子体が目立つタイプの変わり者です。先月、ツノゴケだと思い喜んでいましたが、後に本種だと判明。
ツノゴケは人生を60年近く歩んでいる部活の顧問が未だに見たことのない苔として、是非見つけてほしいと部員や生物選択者に言っていました。普通にその辺で見つかりそうだけどなぁと思っていた物のいざ探すと気配すら掴めず。捜索開始から2か月ほど経過していますが見つかる気がしません。
と、言う訳で心行くまできのこを撮影できました。確実に過去最大の大収穫でしたね(笑)
それにミズゴケまで… 運を使い切ったかもしれない…